更新日時
2026/3/2 06:06
公開日時
2026/2/27 04:53

「何かを表現したい」「自分だけの本を作ってみたい」。そう思いながらも、何から始めればいいのか分からず、一歩を踏み出せない人は多いのではないでしょうか。
地元・大分で新しい挑戦を応援する拠点「ゼロイチビレッジ」にて、個人が自由に制作する冊子「ZINE(ジン)」作りのワークショップが開催されました。第1回のテーマは「企画編」。ゲストを含む10名が参加し、会場はZINEへの関心と「挑戦したい」という熱気に包まれました。
今回は、経験豊富なゲスト2名による実践的な制作プロセスと、当日の様子をレポートします。
参加者さんの背景は実にさまざま。「山小屋で働く方」「普段は同人誌を制作している方」「図書館勤務でZINEの作り方を知りたい方」など、多様な顔ぶれが集まりました。
自己紹介の時間では、ZINEを「究極に自分の趣味を活かせるツール」と語る方や、「シンプルな形の中に多様な表現が詰まっているところに惹かれた」と参加理由を話す方も。それぞれの「表現したい」という想いがとても伝わってきました。
ワークショップの前半では、ZINE制作の経験豊富な2名のゲストから、コンセプト作りから注文までの具体的な道のりが共有されました。

立命館アジア太平洋大学(APU)4回生で、ZINE制作サークルでも活動するかりん子さんは、その制作歴と体験談を惜しみなく共有してくださいました。
初めて作ったのは2022年に友人3人と共同で制作した『怠惰の正当化』というタイトルのZINEです。そして、同じ年からAPUのサークルの活動として、定期的に(年に2回程度)『Mind Treat』というZINEも制作していました。
そして、一番最近作ったのが、マレーシアでの交換留学記である『眠って叫んでもう一周』です。1年間の留学中、毎日つけていた日記や旅の写真、さらにはQRコードを埋め込んで現地の音が聴けるようにしたり、ラジオ・ポッドキャストの収録音源を入れたりして、盛りだくさんの内容に仕上げました。
私はもともと、文章を書くことも、写真を撮ることも、話すことも大好きで、要は「表現」すること自体がすごく好きなんですね。今の時代、動画にしてYouTubeにアップする手段もありますが、私はあえて「紙」という実体として形に残すことに意味があると感じています。特に留学記のように、自分の頭の中の記憶だけでは、どうしても薄れていってしまうものがあると思っていて。それを本という「モノ」として手元に残したくて、制作を続けています。
また、自分1人でZINEを作った時の過程について1個ずつ話していただきました。
1. コンセプトを決める
まず最初にコンセプトを決めるところから始まりました。どんなZINEを作りたいのかを自分で書いてみる。「何か表現したいことがあってそれがスタートなのか、それとも自分の経験を多くの人に伝えて勇気づけたい」とか。
ZINEっていうのは文章だけじゃなくて、写真とか、短歌とか詩とか、インタビューまとめたりとか、本当にもう定義がないと思うんですね。むしろ「自由」っていうことが定義かなと思っていて。なので、どの表現を自分が用いたいのかを最初に考えたらいいんじゃないかなと思います。
2. 構成を決める(ページ割り)
それが終わったら、次に構成を決める。構成っていうのはページ数とか「ページ割り」を決めるっていうことで。『フリーボード』っていうAppleのアプリでブレインストーミングをしていました。
自分のタイプは結構文章量が多かったので、文だけが続くと読む人も疲れちゃうかなと考えて、「文章のページを1、2、3、4ページ挟んだ後に、じゃあ写真2ページ置いてみよう」とか。
それを繰り返して。「ご飯の紹介するページもあったら面白そう」とか。そういう風に考えていって、ステップ1で考えたコンセプトをページ数に落とし込む。
日記ページに4ページ使って、その後写真2ページ、短歌2ページ、っていうのをやりました。
3. 予算を元に体裁を決める
体裁は、ページ数全体で何ページになるかっていうのと、あとサイズ(A4とかB5とか)。あと「綴じ方」。綴じ方は、基本的には「無線綴じ」か「中綴じ」か。これによっても値段が変わってくるので、それをどっちがいいか選ぶ。
縦書きか横書きかによって右開きか左開きかも変わってくるので、これもこの段階で決める。あとはカラーかモノクロか。文章だけでカラーいらないよっていう人はモノクロのほうが安く済むと思うので、それを決めたり。
あと「用紙」。コート紙で光沢を持たせたいかとか、そうじゃないかとか、厚さ。あと「部数」ですね。全部で何部するか。それが決まれば大体予算が出せます。
販売をもし考えてらっしゃる方だったら、1冊あたりの制作費が500円以下のほうがいいのかなって感じです。ZINEフェスとか文学フリマで見る限り、600円から1,200円、大体600円〜1,200円が相場なのかなっていう感じを私は受けました。
4. 印刷所の選び方
私はオンライン印刷を使ってて、今まで使ったことあるのは、安さ重視で書いてある『ラクスル』と『グラフィック』っていうやつを使ったことがあります。
でも他のZINEを販売してる方に聞いたら、『ちょ古っ都製本工房』っていうのもあって、これも結構安くできるって感じでした。
こだわり重視の場合、例えば「ページを和紙にしたい」とか「綴じ方をミシン綴じにしたい」とかだったら『羽車(ハグルマ)』さんとか『レトロ印刷』さんは結構そういう紙の種類とかが多い。
だけどちょっと費用がかかってしまうけど、こだわりたい人はこっちでもすごいいいのができるかなと思います。オンデマンドでやったほうが多分安いのかなと思うんですけど、最初から自分で予算が決まってる人は色々なサービスでページ数とか調節しながら作ってみるのもいいかなと思います。
5. 制作ツール
私は『Canva(キャンバ)』を使っていて、これで全部作りました。文字を配置したり、写真を入れたり。全部Canvaでやりました。
でも他はAdobeとか全然使える方はそっちのほうが綺麗にできると思うし、『Pages』とか『パワーポイント』で作ったっていう人も聞きました。あと手書きですね、それをあとでデータ化したりとか。
あとさっき言った『フリーボード』、私はイラストもそんなこだわりはないので、全部ここにiPadで書いたりとかしてました。
表紙が結構やっぱ重要なのかなっていう風に、やっぱイベントとかに出展すると結構思いました。もちろん自分の目的としては「売るために作ってるっていう感覚はない」んですけど、せっかく作ってるんならちょっと多くの人に見てもらったほうがいいのかなっていう風に思って。そこでやっぱ表紙はすごい重要なんだなってことを感じました。
作る時はいろんな方の雑誌とかZINEを読んで勉強しました。
6. 注文時の注意点
注文は、一旦注文する前にプリンターで印刷したほうがよくって。やっぱずっと私もデジタルで作業してると、本当の大きさがあまり分からなくて、で実際に印刷してみたら、めっちゃ文字がデカくてなんか変だなとか、ここ見にくいなとかあるので、一旦コンビニとか自宅のプリンターで印刷するのがおすすめです。
ネット注文は大体PDF入稿かAdobe Illustratorで入稿。なのでPDFに変えられる形にしておいたらいいかなって思います。
入稿しても結構やり直しとかがあって、結構時間がかかっちゃう場合があるので、イベント参加予定の人は早め早めにしておいたほうがいいかなって感じです。
注文前は、誤字脱字ないかとか、著作権大丈夫かとか、ページ数振るのが合ってるのかとか、あと「画像の飛び出し」「文字の切れ」がないか。
印刷会社によっては「塗り足し」、印刷する時に3mm多く作っておかないと印刷したら切れますよとかでやり直しになるパターンがあるので、それはちょっと印刷会社のやり方を調べていったほうがいいんじゃないかなって感じです。

心理カウンセリングやライフコーチング、リラクゼーションサロン経営など幅広く活動する平石さんは、ZINEを昨年末に知って今年に早速完成されたフレッシュな経験を共有してくださいました。
きっかけは「蔦屋書店に置いてもらえる」特典付きのZINEコンテスト。
「後回しにしてしまいがち。でも“出したい!”と思って、3〜4日で一気に書き上げました。」
入賞は逃したものの、その勢いのまま既にZINEの2冊目も制作しています。
ZINEコンテストに応募した時のお話
『しまうま出版』っていうところの印刷会社を使ったらそのコンテストに出展できますよっていうものだったので、とりあえず5冊、その『しまうま出版』さんで刷ってみたっていう感じです。 で、コンテスト。なんと、入賞しませんでした!(笑) 入賞はしなかったんですけど、モチベにはすごく繋がって、ガーッと作り上げました。
Canvaの注意点(サイズとリサイズ)
Canvaは、無料だとサイズ変更が後からできないんですよ。なので、全部作り直して……ってやるのがめちゃくちゃ面倒くさいので、私は課金しました。
制作の流れ
私は最初に文章をバーッとドキュメントとかに書いて、その後にサイズを設定したものに文章を落とし込んでいくみたいな。
とりあえずデザインとかは一旦置いといて、「大体これぐらいのフォントのサイズだったら何ページぐらいになるんだろう」っていうのをざっと見て、で後からちょっと、「あ、写真入れよう」とか、「なんかちょっとこんなことしてみよう」とかでやってみました。
かりん子先生のZINEをめちゃくちゃ参考にさせてもらったんですけど、「定義は自由」っておっしゃってたんですけど、いざ自由になんでもどうぞって言われると逆に難しくて。なのでやっぱりこういう参考にしたいものがあってすごいやりやすかったというか、ありがたかったです。
後半の質疑応答では、参加者からより詳細な質問が飛び交いました。
Q.「ZINEは本文もカラーが主流ですか?」
かりん子さん: カラーじゃない方も結構いるイメージですかね。だけど、皆さんやっぱ写真とかイラストを用いている方が多いので、数的にはカラーの人のほうが多い感じですかね、私の見た感じだと。
平石さん: 人からもらったZINEなんですけど、短歌プラス写真みたいな感じで、それはフルカラーでした。
Q.「印刷とか製本する時は、何部からとかあるんですか?」
かりん子さん: 1部からできます。「ちょ古っ都製本工房」のように、少ない冊数に対応したネットプリントの会社さんもありました。
平石さん: ネットプリント専門店で作ろうとした時に、1冊だったら2,3千円ぐらいだった気がします。結構高単価ですね、1冊だと。冊数を増やせば増やすほど、やっぱ1冊あたりは安くなるんですよ。予算の塩梅が難しい。
やりすぎると在庫を抱えることになるので。イベントとか出る予定がある方は全然いいと思うんですけど、そうじゃない方は結構少なめで作ってる印象があります。
でも、思ったのは「結構すぐなくなるな」と思いました。配りたくなったり、「見て見て!」ってなるので、5冊とか本当にもう、すぐで。思ったより多くてもいいのかな、みたいな感じもありました。別に腐らないし(笑)。
Q.「印刷形式の本と、手作りっぽいZINE、どちらが多いか?」
かりん子さん: 結構いろいろです。パンチで穴あけて、多分自分でリングで留めたりとか。あと「丸(円形)」のカッターとかもいらっしゃったり、印刷会社通さずに自分で印刷して縫って綴じられる方とか。ZINEフェスとか行くと、結構ユニークな方がいらっしゃいましたね。

「定義は自由。むしろ自由こそが定義」というかりん子さんの言葉は、ワークの時間で参加者の皆さんが自分なりのテーマを模索し始める際の大きな後押しとなりました。
「企画編」を終え、参加者さんは「自分の好き」を形にするという、ZINEづくりへの第一歩を踏み出しました。
次回の第2回では、さらに具体的な流通や製本について学ぶ予定です。
ここからどんなZINEが生まれるのか、とても楽しみです。
この記事を書いた人
碇谷 堅樹 / Kenki Ikariya
ゼロイチビレッジの運営代表。場づくりとイベント企画、ローカル×ITの実践を発信しています。