ZINE作りワークショップ【製本・流通編】——ゼロイチビレッジ開催レポート  

更新日時

2026/4/15 10:10

公開日時

2026/4/15 02:46

「自分の作ったZINEを、どのように形にして、どう届けるのか」。
企画を形にした後に待っているのは、製本、そして読者へ届ける“流通”のステップです。

大分での新しい挑戦を応援する拠点「ゼロイチビレッジ」で開催されたZINE作りワークショップ。第2回のテーマは「製本・流通編」です。

前回に続き、製本や流通についての学びの様子をレポートします。

前回のイベントの様子はこちらから
>> 自分の「好き」を「形」にする。最初の一歩を踏み出すZINE作りワークショップ【企画編】——ゼロイチビレッジレポート

参加者のZINEテーマ

ワークショップの冒頭では、現在取り組んでいるZINEのテーマが共有されました。

「ZINEの定義は自由」という前回の学びを活かしながら、それぞれが個人的な「好き」を形にしようとしています。

手軽な製本と、ZINEフェスで感じた“熱量”

ゲスト講師の平石さんから紹介されたのは、A4用紙1枚から冊子を作るシンプルな手法。実際に参加者に紹介していたサンプルは、約2,000字ほどの短編が収められており、「このくらいのボリュームでも十分に一冊として成立する」というお話も。

同じ内容のZINEでも、印刷方法や製本の違いによって印象やコストが大きく変わる点も紹介されました。

実際に複数のサンプルを手に取りながら、参加者は「どの仕様で作るか」という具体的なイメージを深めていました。

さらに話題は、直近で参加した長崎のZINEフェスへ。

会場には約40組ほどの出展者が集まり、手作りの豆本や、大学の卒論をそのままZINE化したユニークな作品など、多様な表現が並んでいたといいます。

中でも印象的だったのは、すべて手書きで制作されたZINE。直線すら定規を使わずに描くというこだわりに、「作ることそのものへの熱量」を感じたそうです。

そして、平石さんが強く感じたのが“対面でのコミュニケーションの価値”でした。

やっぱりトークが大事だなと思いました。どういう思いで作ったのか、直接聞けるのがすごく楽しくて。


作品の背景にあるストーリーや思い入れを聞くことで、ZINEへの理解や愛着が一気に深まる。来場者自身も、“会って話を聞きたい”という気持ちに自然と引き寄せられてブースに足を運んでいるのかも——そんな気づきがあったといいます。

ZINEは「作る」だけでなく、「どう届けるか」「どう伝えるか」まで含めて作品になる。それを体感するエピソードでした。

ZINEは“出会い”で広がる。リアルな熱量を支える流通のかたち

後半では、ZINE流通プラットフォーム「Zindies(ジンディーズ)」を開発するChikuraさんから、ZINEを取り巻く流通の今と、これからの可能性についてお話がありました。

Chikuraさんはプログラムを書く立場から、クリエイター・読者・店舗をつなぐ仕組みづくりに取り組んでいます。もともとはオンライン上の流通やマッチングをどう支えるかを考えていたそうですが、活動を続けるなかで、ある実感が強くなっていったといいます。

それは、ZINEの世界では“まず会うこと”が重要だということでした。

前はオンラインで何かできないかと考えていたけれど、今はむしろ、みんなが実際に会ったときの活動を支えられたらいいと思っています。

ZINEフェスや各地のイベントに足を運ぶ中で見えてきたのは、作品そのものだけでなく、作り手と読み手が直接出会い、会話し、その場で興味が連鎖していく面白さでした。

誰かの作品に触れた人が「自分も作ってみたい」と思い、新しい表現がまた生まれていく。その“増殖していく感じ”こそが、ZINEの魅力のひとつだと語ります。

書店でも広がる、ZINEの存在感

印象的だったのは、名古屋の書店「Nagoya BOOK CENTER」で起きている変化についてのお話です。

通常の書籍も扱う一方で、少しずつZINEの取り扱いを増やしてきた「Nagoya BOOK CENTER」。店長の藤坂 康司さんは、ZINEという世界に触れたとき、「こんなに自由で、面白くて、売ること自体が楽しいものがあるのか」と驚いたそうです。

一般的な書籍は、バーコード管理や流通の仕組みが整っている一方で、価格や届け方に一定の制約があります。けれどZINEには、内容だけでなく、サイズや紙質、製本、デザインまで含めて自由さがあり、その“普通の本にはない面白さ”が人を惹きつけるのだといいます。

実際に、その書店ではZINEコーナーがどんどん広がっており、今では店内でもしっかり存在感のある売り場になっているとのことでした。

個人制作のZINEが、海を越えることもある

もうひとつ紹介されたのが、図書館勤務のご経験をもとに制作されたZINEの事例です。

その作品は、日本国内でも図書館関係者などを中心に反響があり、決して安価ではない価格帯ながら、各地で手に取られているそうです。さらに興味深いのは、そのZINEに韓国語版が生まれたことでした。

きっかけは、韓国の本屋さんから「置きたい」という声がかかったこと。ChatGPTを使って翻訳を進め、実際に韓国語版を制作し、現地の書店に置かれる流れへとつながっていったといいます。

AIによって翻訳のハードルが下がった今、個人が作ったZINEが海外の読者と出会う可能性も、以前よりずっと現実的になっています。

「日本の中だけでも十分面白いけれど、海外に目を向けると、もっと可能性がある」

ZINEは、まだ“出会いたがっている”

Chikuraさんのお話の中で特に印象に残ったのは、ZINEはまだ、安定した出会いの場を持っていないという視点でした。

図書館に置かれることはまだ少なく、一般的な書店でも常時並んでいるわけではない。だからこそ、読みたい人も作りたい人も、どこかで“出会い”を求めている。

その結果として、ZINEフェスのような場に人が集まり、作り手と読み手が直接つながることに大きな価値が生まれているのだといいます。

「みんな出会いたがっている状態なんですよね。だからフェスが盛り上がるし、会いに行く意味がある」

オンラインは、その続きを支えるためにはとても有効です。けれど、最初のきっかけはやはり物理的な場にある。今回のように顔を合わせて話す場そのものが、ZINE文化の広がりにとって欠かせない起点なのだと感じさせられました。

“会った証”を残す、コレクションカードの試み

そんな考え方をもとに生まれたのが、Zindiesの「Zindiesカード」です。

これは、クリエイターや店舗ごとに発行されるカードをスマートフォンで読み取ることで、その場で情報にアクセスしたり、コレクションしたりできる仕組みです。

Chikuraさんはこれを、「イベントで出会ったクリエイターを、ポケモンのように集めていく感覚」と表現していました。

単なるデジタル名刺ではなく、“実際に会ったこと”そのものを記録する仕組みとして設計されているのが特徴です。

会場でも実際に参加者がカードをスマートフォンで読み取り、登録を試す場面がありました。

この仕組みによって、カードを読み取ってくれた相手には、今後イベント情報や新作のお知らせなどを届けることもできるようにされたいとお話しされていました。

商業出版とZINEの違いは、「距離」にある

質疑応答では、「商業出版とZINEの違いは何か」という問いも投げかけられました。

それに対してChikuraさんは、流通構造の違いをふまえながら、両者の違いを“距離”という言葉で整理していました。

ZINEはそもそも少部数で作られ、限られた人に届くことを前提にしていることも多く、作り手と読み手の距離が非常に近いのが特徴です。

その代わり、ZINEはどこに何があるのかを網羅するのが難しく、偶然の出会いや口コミ、イベントでの接点が大きな意味を持ちます。だからこそ、既存の出版流通の代替ではなく、まったく別の面白さを持つ表現と流通の世界として考えるべきだ、というお話もありました。

通販や委託もあるけれど、起点になるのはやはり“人”

通販や委託販売についての質問には、BASE、STORES、BOOTHといった既存サービスがよく使われていることも紹介されました。

Zindiesが目指しているのは、単に売る場所をつくることではなく、クリエイター、店舗、読者が出会い、その先のやり取りまで自然につながっていくことです。

店舗と作り手が直接つながり、メッセージを交わしながら関係が生まれていく。
その体験自体が、従来の流通にはなかった面白さとして共有されました。

海外とのやり取りに備えて、自動翻訳機能も実装しているとのこと。韓国語などで届いたメッセージも日本語で読めるようにし、逆もまた可能にすることで、国を越えたコミュニケーションも支えようとしています。

流通は、届け方ではなく“関係のつくり方”なのかもしれない

Chikuraさんのお話を通じて見えてきたのは、ZINEの流通とは単に「どう売るか」という話ではない、ということでした。

誰が作っていて、誰が面白がっていて、どこで出会い、どうつながり続けるのか。その関係性まで含めて設計していくことが、ZINEにおける流通をもっと面白くするかもしれません。

オンラインの利便性を取り入れながらも、起点にあるのはあくまでリアルな出会い。その熱量をどう支え、どう次につなげていくか。Zindiesの取り組みは、その問いに対するひとつの実践として、とても刺激的なものでした。

まとめ:ZINEは、誰かとつながるための“最初の一冊”になる

平石さんのお話からは、手軽な製本でも十分に一冊として形になり得ること、そして対面の場で作品の背景や思いを直接伝えることの大切さが見えてきました。

Chikuraさんのお話からは、ZINEの流通が単なる販売手段ではなく、作り手・読み手・届け手が出会うための仕組みとして成り立っていること、そしてリアルな場を起点にしながら、その先をデジタルが支える形が見えてきました。

印象的だったのは、「無料で渡すのも嬉しいけれど、お金を払って受け取ってもらうことで関係性はより深くなる」という視点です。

また、平石さんが語ってくれた「おばあちゃんが一番の営業マンになった」というエピソードも象徴的でした。

ブログやSNSではなかなか届かなかったかもしれない相手に、本という形になったことで届けることができた。電源を入れなくても読める、手に取れる、誰かに見せたくなる。そうした“リアルなモノ”ならではの魅力を改めて感じる場面でした。

デジタルで多くのことが完結する時代だからこそ、人が実際に会って話し、手渡しし、偶然の出会いを楽しむことの価値は高まっているのかもしれません。

ワークショップの最後には、参加者から「高校生の授業に取り入れてみたい」「今年中に一冊出したい」「まずは書き溜めてみたい」など、それぞれの次の一歩が自然に言葉になっていきました。

完成された作品を見せ合う場だけではなく、まだ途中のアイデアや素材を持ち寄りながら、「こんな感じでいいんだ」「自分にもできそう」と思える空気があったことも、この会の大きな魅力だったように思います。

ZINEは、完璧に整ったものだけを世に出すための手段ではなく、まずは自分の“好き”や“気になっていること”を誰かに手渡してみるための、小さくて自由なメディアでもあると思います。

そしてその一冊は、ときに新しい出会いや、思いがけない広がりを連れてきてくれます。


ゼロイチビレッジでも、今回のワークショップのように、ZINEづくりや発表イベントを定期的に開催予定です。ご関心のある方は、ぜひお気軽にご参加ください。

📚 4/25(土)13:00開催!
はじめてのワンシートZINEづくりワークショップ

A3用紙1枚からはじめる、シンプルなZINE制作。実際に手を動かしながら体験できます。

👉 詳細はこちらから
https://www.instagram.com/p/DWLgYTOGFKf/?img_index=1

この記事を書いた人

碇谷 堅樹 / Kenki Ikariya

ゼロイチビレッジの運営代表。場づくりとイベント企画、ローカル×ITの実践を発信しています。